主なポイント
- 薬学部学生139名を対象としたランダム化研究で、同じ臨床内容をKahoot! で学ぶ場合と従来型の講義で学ぶ場合を比較。
- 2週間後のテストで高得点:Kahoot! を使用した学生は、講義を受講した学生よりも有意に高いスコアを記録 (9点満点中5.5点 対 4.0点)。
- 新しい学習内容でより良い成果:Kahoot! で学んだグループは、2週間後の新規学習内容を問う設問でも有意に優れた成績を収めた。
- 学習意欲の向上:Kahoot! を利用したすべての学生が、学習中に集中でき、楽しんで取り組めたと回答した。
ゲームベースの学習は医学、看護学、薬学において学習成果を向上させることが示されています。丸山らによる最近 (2026年) の研究 (日本薬学教育学会掲載) では、日本の教育現場におけるKahoot! の効果が検証されました。
研究チームは、既存のコースを大幅に変更することなく、薬学教育においてゲームベースの学習を取り入れることで、学生の知識習得、定着、学習意欲を向上させられるかどうかを検証しようとしました。
その結果、わずか1回のゲームベースの学習セッションであっても、測定可能な違いをもたらすことが示唆されました。
Kahoot! を利用した学生は授業2週間後の確認テストで有意に高いスコアを記録
この研究には、病院や薬局での4年次実務実習を控えた、基礎生命維持 (BLS) の授業を受講している3年生の薬学生139名が参加しました。
まず学生全員が、既習の概念を復習する10分間の講義を受けました。その後、2つのグループにランダムに振り分けられ、胸骨圧迫に関連する外傷や自動体外式除細動器 (AED) の使用など、新しい臨床情報を扱う40分間のセッションに参加しました。
68名の学生からなるグループは従来の講義を受けました。もう一方の71名のグループは、5〜6人のチームに分かれ、11問のkahootをプレイし、同じ内容を学びました。
学生は、授業の2日後、2週間後、4週間後のいずれかの時点で、同一の確認テストを受けました。
授業2日後では、Kahoot! グループの方がわずかにスコアが高かったものの、統計的に有意な差はありませんでした。
2週間後にはその差が1.5点に広がりました。 Kahoot! で学んだ学生の平均点は9点満点中5.5点だったのに対し、講義を受講した学生は4.0点でした (P < .01)。
この優位性は、過去に学習した内容だけでなく、新たに導入された臨床知識にも及びました。新しい内容を評価する7問において、Kahoot! グループの2週間後の平均点は3.9点だったのに対し、講義グループは3.0点でした (P = .02)。
4週間後もKahoot! を使用した学生の方が平均スコアは高かったものの、統計的な有意差は見られなくなりました。
各期間で異なる学生がテストを受けたため、この結果は個々の学生の知識の経時的変化ではなく、グループ間の差異を示しています。

授業2週間後、チームでkahootをプレイした学生の平均点は9点満点中5.5点、講義グループは4.0点 (P < .01)。(丸山ら (2026年) より改変)
即時のフィードバックとチーム対抗戦が魅力的な学習体験をサポート
Kahoot! で学んだ学生は、なぜより良い成績を収めることができたのでしょうか?
この研究では個々のゲーム機能の効果を個別には検証していませんが、その設計からいくつかの要因が浮かび上がっています。学生は単に説明を聞くだけでなく能動的に問題へ回答しました。また、各問題の直後にフィードバックが得られたことで、教材の記憶がまだ新しいうちに正解と不正解を確認できました。
また、チームのスコアやランキングによって、共通の目標意識と競争心がもたらされました。学生のフィードバックには、これらの機能に価値を見出す声が反映されていました。ある学生は次のように説明しています。
「単に問題を解くだけでなく、得点システムによって正解と不正解が際立つため、強い印象に残り、学習に非常に効果的でした。」
また、別の学生は参加型の体験を評価し、「自分のスマホでプレイできたので、意見を出しやすかった」と述べています。
アンケート結果でも、ゲームベース形式に対する非常に肯定的な反応が示されました。
- Kahoot! を利用した学生の100%が「楽しみながら学べた」と回答したのに対し、講義形式の学生では60%。
- 100%が「授業中に集中できた」と回答したのに対し、講義形式の学生では78%。
- 99%が「学習意欲が高まった」と報告したのに対し、講義形式の学生では67%。
- 96%が「同様の形式の授業にもっと参加したい」と回答したのに対し、講義形式の学生では63%。
これらの結果を総合すると、Kahoot! は学生にとって楽しく、学習意欲を高め、魅力的な学習体験を創出したことがうかがえます。
チームディスカッションを増やせば、長期的な記憶定着は強化できるか?
2週間後の結果は有望なものでしたが、4週間後にはグループ間の統計的有意差は見られなくなりました。
研究者チームは、その理由としていくつかの可能性を挙げています。ゲームベースのアクティビティに伴う高揚感が時間の経過とともに薄れることや、新しい情報を振り返ったり、既存の知識と結びつけたりする機会が限られていたことが、長期的な定着に影響した可能性もあります。
興味深いことに、学生たちも同様の改善点を指摘していました。
kahootはチームでプレイされたものの、学生は個別に問題に答えていました。研究者チームは、個人で考えることを促すため、踏み込んだ議論をあえて制限していたのです。しかし、Kahoot! を使ったグループの学生から最も多く寄せられた改善案は、チーム内でのやり取りをもっと増やしてほしいというものでした。
ある学生は次のようにコメントしています。「チームで話し合って問題を解決できたらもっと良かったと思います。」
研究者チームは、問題と問題の間に短い話し合いの時間を設けたり、回答を送信する前にチームメンバー全員で共通の答えを決めたりする方法を提案しています。これらの変更は今回の研究では検証されていませんが、ゲームベースの学習の取り組みやすさと、より深い協働学習を組み合わせたい教育者にとって、実践的なアイデアとなるでしょう。
薬学教育におけるゲームベースの学習が意味するもの
薬学、医学、その他の医療系分野の教育関係者にとって、この結果は実用的な可能性を示しています。アクティブラーニングを導入するにあたり、コース全体を全面的に再設計する必要は必ずしもありません。
今回の研究では、講師は授業の教材、所要時間、必要なリソースを大幅に変えることなく、既存の臨床内容をインタラクティブな学習セッションへと変貌させました。その結果、2週間後の確認テストでの高得点と一貫して好意的な学生のフィードバックにつながる学習体験が実現しました。
講師にとって、この結果は大いに励みになります。既存の授業にインタラクティブな問題、即時フィードバック、チームベースのエンゲージメントを取り入れることで、学生のモチベーションを維持し、学んだ内容の定着率を高められる可能性があります。